最近、エシカル消費という言葉を耳にする機会が増えてきました。

エシカル消費とは

https://www.ethical.caa.go.jp/ethical-consumption.html

直訳すると倫理的・道徳的な消費という意味みたいです。

道徳的というと、少し、堅苦しい感じもしますが、もともと、日本には、三方良しという言葉があるように、受け入れやすい概念のように思います。

昨年、渋沢栄一を主役にした大河ドラマが放映されましたが、渋沢栄一が掲げた資本主義は、この三方良しという考え方を元に、自分だけではなく、周りの人間や地域社会までを考えて、経済活動を行うのが理想であるという考え方で、日本人は、共感できる人が多いのではと思います。

もちろん、経済活動に持続性を持たせるためには、利益を出さないといけないので、慈善活動ではないのが前提ですが、利益を出しつつも、周りの人間や社会にも還元していくという考え方でないと、逆に、これからの時代は、商売が上手くいかなくなるというのは、事実だと言えます。

短期的な利益を上げるには、利己的なほうがリターンは大きいと思いますが、インターネットやSNSにより評判が可視化できるようになった社会においては、中長期的には、相手のことも考えたほうが、良い評判を得られて、より大きなリターンが得られます。

これは、個人の行動にも言えて、短期的には、利己的に行動するほうが得をしますが、長期的に見た時には、周りの人からの評判を考えると損をします。

最近の若者は、道徳的な消費を意識する人が増えているようですが、SNSなどで、評判が可視化されるようになったことは無縁ではないと思います。

どうせ、物を買うなら、自分以外の人も得をするような消費をしたほうが、ハッピーになれるし、そのほうが、自分自身もポジティブな気分になれて、それで経済が回っていくのなら、その価値観自体が浸透していれば、今の閉塞感のある空気が、ポジティブなものに変わっていくという希望も持てます。

エシカルな消費が、どの程度、意識されているのかというのは、その人にもよるのかも知れませんが、身近なところでは、レジ袋の代わりに、買い物袋を用意したり、中古品を購入して使うことなど、簡単なことでも、社会に貢献していると言えると思います。

最近は、シェアリングエコノミーという言葉も浸透していますが、使わないものを他人とシェアすることで、もともと、価値のなかったものが、他の人にとっては、価値のあるものに変わるというのは、物を無駄にしないという意味でも、とても、大きいです。

若い世代にとっては、今や、フリマアプリで物を売買するのは、当たり前になっていると思いますが、フリマアプリのメルカリは、もともと、世の中から、できるだけ捨てる物をなくしたいという理念のもと、作られたもののようです。

フリマアプリを使って物を売るとき、それが社会の役に立っているというのを意識する人は少ないかも知れませんが、自分が使わなくなった物を、他の人に売ることで得られるのは、金銭だけでなく、世の中からゴミを減らすとに貢献していることでもあり、それを、考えて設計しているメルカリが社会に浸透しているのは、時代の流れだと言えます。

エシカルな消費は、単純に、物を消費しないということではなく、できるだけ、無駄な買い物をせずに、自分自身の価値観にあった買い物をすることで、相手にも社会にも貢献できるという考え方だと思いますが、それには、物やサービスを作る側の考え方や、価値観を知っていると、より、消費が楽しくなるように思います。

買い物をするのに、難しく考える必要はありませんが、この商品やサービスにどんな価値が含まれているのか理解することで、より、その商品やサービスに価値を感じられて、それを消費することに、楽しさや幸福を感じられるのは大きいと思います。

パタゴニアが「初の日本発商品」に日本酒を選んだ理由。五人娘、一ノ蔵…「野鳥との共生」コメづくり広がる

https://www.businessinsider.jp/post-248537

パタゴニアと言えば、熱狂的なファンも多いアメリカのアウトドアブランドですが、いち早く、環境にも配慮したモノづくりをしています。

先進的な理念と物作りに対するこだわりは、多くのファンを引き付けていますが、他の会社と比べて、ユニークで自由度の高い働き方は、その企業カルチャーに憧れて、就職を希望する人も多いようです。

そのパタゴニアが日本の酒造会社とのコラボレーションで生み出された日本酒ということですが、日本の伝統的な造り酒屋とアメリカの先進的な企業とのコラボレーションは、なかなか、興味深いものがあります。

日本人は、伝統的に、自然との共生という価値観が根付いていますが、その日本人の価値観とパタゴニアの企業理念は、とても、相性がいいように思います。

今の時代、日本酒自体、人気があるとは言えないので、伝統的な日本酒の作り手は、厳しい経営環境に置かれていると思いますが、もともと、職人的な気質を持った日本酒作りは、他のお酒と比べて、価値が低いわけではないと思います。

日本人の職人気質は、品質の高いものを作る技術は高いと思いますが、それを価値として提示するのは、苦手で、それが、日本の弱点とも言えます。

実際に、日本酒は、ワインなどと比べて、いいお酒でも、相対的に、低価格なものが多く、逆に、それで、価値を損なっているようにも思いますが、少し、頑張れば、おいしいお酒を飲めるということでもあるので、若い世代にも口にしやすいというのはいいことかも知れません。

最近では、発酵食品が身体に良いという価値観が広まったことで、若者や女性にアピールする日本酒も出てきていているようですが、実際に、その価値観を共有する人達の間で、人気が出ているようです。

ただの消費ではなく、相手のことや社会のことまで考えて買い物をするというのは、よほど、意識していないとできないように思いますが、自分の価値観に合ったものを吟味したり、できるだけ、無駄な消費をしないことで、周りにもいい影響を与えられるなら、簡単なことからはじめてみると、ちょっとした幸福感が得られて、楽しいと思います。